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Sunny Side Beach — Another Place — “The Unsent Postcard”「投函しなかった絵葉書」

もうひとつの浜辺は、ルーシーが教えてくれた通り、道からは見えなかった。

低い石垣の脇を通り、背の高い草の間を抜ける。潮の匂いが急に濃くなったと思ったとき、海が開けた。

白い砂はそれほど広くない。流木が数本、波の届かないところに横たわっている。

観光客の姿はなかった。

浜辺の端に、ひとりの女性が座っていた。

膝の上に小さな水彩絵の具の箱を置き、厚い紙に空を描いている。

エマが通りかかると、女性は筆を止めた。

「道、分かりにくかったでしょう」

「小さな案内人がいたので」

「ああ、ルーシーね」

女性は笑った。やはり秘密なのは、旅人にとってだけらしい。

「絵葉書ですか?」

「そう。毎年、一枚だけ描くの」

横には、小さな箱があった。ふたが少し開いていて、中には何枚もの絵葉書が重なっていた。

晴れた海。曇った海。夕焼けの海。

どの絵にも、切手は貼られていない。

「送らないんですか?」

「送る相手はいるの。でも、今は住所が分からなくて」

女性は少し考えてから、こう続けた。

「初めのうちは、いつか住所が分かったら全部送ろうと思ってた。でも、今は違うのよ」

「どうして?」

「描くと、その年の海を覚えていられるから。相手に届かなくても、私には残るでしょう」

エマはバッグの中の古い手紙を思い出した。

会えなかった人へ。

そこにも、届け先の名前はなかった。

女性は最後に波打ち際へ薄い青色を足し、紙を風にかざした。

「今年の一枚ができたわ」

エマは、波に濡れた貝殻を一つ拾った。内側が淡い桃色だった。

「それ、きれいね」

「三つ波を待ってみます」

「何のために?」

「持って帰るか、決めるために」

女性は不思議そうな顔をしたあと、声を上げて笑った。

やがて、三つの波が来た。

エマは貝殻を浜辺に戻した。

帰り道、草むらの向こうで、スケッチブックを抱えた青年とすれ違った。彼は軽く会釈し、誰もいない方の砂浜へ降りていった。

この街には、描いても、書いても、届けなくてもいいものがある。

エマはそう思った。

海からの風は、背中をそっと押していた。

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