MENU

Sunny Side Cafe -“The Usual Table”「いつものテーブル」

Sunny Side Cafe -「いつものテーブル」

マリアがカフェに来るのは、いつも木曜日の午後二時だった。

窓際の一番奥のテーブル。日差しが柔らかく差し込むその席は、いつからか彼女の「定位置」になっていた。
注文はアメリカーノ、砂糖なし。
マスターのエドは何も聞かずにカップを持ってきてくれる。

夫のトーマスと二人で通い始めたのは、もう二十年以上前のことだ。

結婚の話をしたのもここ。
娘のことを報告したのもここ。
彼が病気だとわかったのもここ。——彼自身の口から聞いた。

トーマスが逝って、三年が経つ。

マリアは、いまだに木曜日の午後二時に来ている。
窓の外を流れる人々を眺めながら、アメリカーノを一口飲む。
そのたびに、向かいの椅子が少しだけ温かい気がした。
気のせいだとわかっていても、それでいいと思っていた。

その日、いつもの席に着くと、少し離れたテーブルに見慣れない若い男性が座っていた。
スケッチブックを広げて、何かを描いている。しばらくして、彼はマリアに気づいて軽く会釈した。

「すみません、描いてもいいですか。」

断る理由もなく、マリアは頷いた。

十分ほどして、彼は一枚の紙をそっとテーブルに置いて店を出た。

そこには、窓際の席で静かにカップを持つマリアと——向かいの椅子に、誰かの気配が描かれていた。輪郭だけの、淡い人影。

マリアはしばらく、その絵を見つめた。

エドがそっとコーヒーのおかわりを持ってきて、何も言わずに下がった。

窓の外では、あの青年がスケッチブックを脇に抱えて、マルシェの方へ歩いていくのが見えた。

Sunny Side Cityの午後がいつものように、ゆっくりと流れていた。